弁護士 小川義龍 の言いたい放題

 30年選手の弁護士小川義龍(東京弁護士会所属)が、歯に衣着せず話します。

弁護士にとって法律はツールである

法律オタクになってはいけない

 私は司法修習生に、そう、よく語っている。
 弁護士は、法律問題を正しく解決するのが仕事であるが、法律にとらわれてばかりいると、おかしな結論も疑問に思わなくなってくる。法律に照らした結果だから仕方ないんだと。

 しかしこれは間違っている。問題を法律に放り込めば結論が出るのが弁護士の仕事だったら、そんなものはコンピュータにやらせておけばよい。

弁護士は板前で、法律は包丁だ

 弁護士の仕事は、正しい結論を導くために正しく法律を解釈適用するところにある。
 喩えて言えば、板前と包丁の関係だ。

 美味しい料理をつくるために正しく包丁を使うこと。お客が欲しているのは、美味しい料理。もちろんカウンター越しに、美しい包丁さばきを、見られるものなら見たいと思うだろうが、そんなプロセスや道具より、美味しい料理こそ期待されているのだ。

 だから、法律オタクになりすぎると、包丁を研いだり、包丁を収集したり、こういうことばかり気になって、肝心の旨い料理は二の次になる。私は写真が趣味のひとつだが、カメラ道具ばかり集めて、ためつすがめつし、なかなか実際に写真を撮りにいったり現像しないのと同じだ。こういうのを本末転倒という。

 学者なら法律オタクでもよさそうだが、実務家である弁護士たるもの、依頼者の期待に応えるため、結果を出すため、社会正義を実現するため、こういう思い通りの結論を導き出すためのツールが法律だと心得るべきだ。

判例を創る気概を持て

 もうひとつ言うと、法律オタクのみならず判例オタクもいけない。もちろん実務は法律と判例で動いているから、これを知っていることは重要だ。法律や判例の無知は、ただの素人に過ぎない。

 しかし弁護士は、少なくとも判例を創る側だ。「こんな判例があるから、この事件は負け筋」なんてことを常に考えて事件処理していると、いつまでたっても判例は変わらない。

 もちろん、ほぼ確立している判例に対して独自の解釈で闇雲に挑みかかるのは、まあどっちかというとアホかもしれない。しかし意識として、どんな判例だって常識的でないと思ったら、こいつを覆してやろうじゃないかと、こういう闘争心は、弁護士であれば常に持っていたいものだ。

常識はどこにあるか

 じゃあ常識的結論とか正しい結論とか、こういうものはいったいどこにあるんだ?弁護士がよりどころとすべき常識って何?正しいって何?何時何分何秒?と小学生みたいな質問するあなた。あなたの疑問に、私がお答えしよう。

 常識的結論や正しい結論は、現実の、生の、人の暮らしの中にある。

 それがなんだかわからないけれども、とにかく存在しているのだ。何?と考える前に厳然と息づいて存在しているのだ。美味しい料理が存在するのと同じように存在しているのだ。

 だから弁護士は、法律の研鑽もさることながら、さまざまな人々の生きた暮らしを身をもってよく知らなくてはならない。さまざまな人の味覚の嗜好を知らなくてはならない。
 だから私は司法修習生によく語っている。

 好奇心旺盛になれ、世事を好き嫌いするな、パチンコもしてみろ、週刊大衆を読め、アサヒ芸能読め、男も女も一度はキャバクラ行ってみろ、と。そういうことだ。・・・あれ?

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