久しぶりの継続連載だ。Facebookは毎日更新しているんだが、ブログは気に入ったエディタが見つからないこともあって、更新作業にちょっとしたストレスが溜まるため、不定期連載になりがちで恐縮である。前回、弁護士の専門分野について語ったのが、もう半年以上前だ。
さて今日は、「テレビに出てる弁護士ってどうよ?」 これを語ってみたい。
テレビに出てる弁護士ってどうよ?
弁護士に限らず、テレビに出ている人というのは、別格に思われがちだ。芸能人はもとより、弁護士や医者や評論家などの文化人も、なんだか別格に思われがちだ。これ自体は大衆心理だから、どうこう言うつもりはない。
問題は、じゃあ本当に別格なのか、つまり優秀な弁護士なのか。これだ。仮にテレビに出ている弁護士が優秀であれば、弁護士選びの選択肢の中に「テレビ出演経験」という項目を設けた方がいいことになる。
テレビに出ている弁護士と言っても、いくつかパターンがある。(1)バラエティ番組に出ている弁護士、(2)報道番組に出ている弁護士、(3)スポットで出演した弁護士、(4)レギュラーで出演している弁護士、こんなところだろうか。
バラエティ番組に出演している弁護士
ほんと申し訳ないんだが、これは論外だ。
バラエティ番組に弁護士や医師が出るのって、要するにイジられ役であり道化役である。弁護士がこんなことするの!?弁護士がこんなこと言うの!?というギャップで視聴者を楽しませるネタにされているだけで、決して弁護士としての専門性を売っているわけではない。単に弁護士資格があって、キャラ立ちがよければ、番組としては美味しい素材だ。
だから、バラエティ番組に出ているから、弁護士として優れているとは言えない。もちろん優れていないとも言えないのだが、まあ悪いけど、普通の感覚を持っている人なら(敢えて「弁護士」ではなく「人」という)、バラエティ番組に出ていじられようとは思うまい。そういう普通でない感覚を持ってしまっているところで、既に普通の弁護士とは違うわけで、そういう普通の弁護士とは違う何かを求めたい依頼者にとってはいいかもしれない。
ちなみに僕の頭の中では、行列のできるなんとかって番組はこの範疇だ。
報道番組に出ている弁護士
この中には、経験値の高い人が含まれていそうだ。
何か事件が起こってスポット的にコメントを求められた弁護士、これはその事件分野ではそれなりに経験のある弁護士だったりする。私もいままで某民法キー局のニュース番組に、自分の得意分野で何度かコメント出演したことがある。余談だが、事務所に大がかりな照明をセットしてカメラを持ち込んで1時間ほどインタビューを受けたわりには、30秒ほどの出演にしかならなかったのは、想定どおりとはいえ笑った。
ただしこれには注意点がある。コメントを求められているのが、いわゆる「テレビでよく見る弁護士」だとか、報道番組にレギュラー出演している弁護士だとかは、必ずしもその問題に詳しいからコメントしているわけではなく、テレビ局にとって使い勝手がいいからコメントさせている可能性がありそうなことだ。報道は速報性が求められるわけだが、何か事件が起こったときに、専門弁護士からすぐコメントを得られるとは限らない。一般市民が弁護士選びに苦労するのと同じく、テレビ局だって弁護士の手持ちがたくさんあるわけではない。そうすると、専門ではなさそうだが、手近な知り合いの弁護士にコメントしてもらうことになる。
報道番組でよくコメントしている某刑法学者先生など、まさにその例だ。我々からすると、トンチンカンなコメントだなあと思われることをもっともらしく語っているので、なんだかなあという感じだ。
結局、どうってことはない
テレビでスポット的にコメントを求められて語る弁護士は、少なくともその分野の経験値がありそうだとの予測が立つ程度で、それ以上のものではない。これにしても、経験値があるだろうと想像できるだけで、その分野の第一人者であるとは限らず、優秀とも限らない。
ましてレギュラー出演している弁護士、それがバラエティ番組だったりしたら、もう、いったいこの人は何が本業なんだろうと思わざるをえない。二股をかけていると言うことは、経験値を積みにくいと言うことだ。私の持論として、「職人は経験値」「弁護士は経験値」なわけだが、経験を深めたければ、本業の弁護士業に集中しているだろう。テレビに出ても、ちょっとした社会経験は積めるが、本業の経験値はさほど高まらない。
そもそもテレビ局に弁護士が出演する経緯。これが、たいがい大したことはない。プロデューサーの知り合いであるとか、飲み屋で知り合ってテレビ映えして面白そうだったとかだ。そんな人的繋がりがあればまだしも、営業電話のように手当たり次第電話してコメントできそうな弁護士をしらみつぶししたり、そんな弁護士としての能力や経験値に何の裏付けもなく出演している人がほぼ全てだ。
だから、テレビに出ている弁護士、これを弁護士選びの基準に据えてはならない。これが今回の結論。おそらく、医者にしろ、板前にしろ、その他の職人にしろ、同様の結論になるんじゃないか。
次回予告
次回は、本を書いている弁護士、講演する弁護士、この辺を書いてみよう。
(つづく)
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