弁護士 小川義龍 の言いたい放題

 30年選手の弁護士小川義龍(東京弁護士会所属)が、歯に衣着せず話します。

弁護士の選び方(8)・・・講演する弁護士

 このところ似たような話を連投して恐縮である。ときどき話し始めると微に入り細にわたってしまう嫌いがある。ご容赦願いたい。さて、前回は、弁護士選びに際して、本を執筆している弁護士をどう評価するかということを書いた。今日は、セミナーや講演をする弁護士についてお話ししてみよう。

やっぱり業界向けなら偉い

 前回のブログでは、一般向けの書籍を執筆していても弁護士選びの基準にはなりにくく、あくまでも法曹業界向けの専門書を執筆しているかどうかがアドバンテージになると書いた。それは講演等でも同じだ。

 一般向けの講演等は、聴講者が素人だから、適当なことを喋り散らかせる。内容よりも話の面白さで聴講者を惹きつけたりしやすい。だから、一般向けの講演等をしているというだけでは、その弁護士の専門性や経験値の高さは量りにくい。

 だから、ここでもやはり弁護士向けの講演等かどうか。聴講者が弁護士であれば、その分野での経験値は高いと言ってよさそうだ。

弁護士向けでなければ対象者を見る

 講演等の対象者が弁護士であれば、それだけで講演する者のレベルが推測できるが、では、弁護士向けでなければダメかというとそうではない。この場合「対象者と演題」の関係を考えると、その弁護士の凄さがわかることもある。例えば、情報通信系の管理者向け企業内研修で、ネットワーク法務を語る弁護士、これはおそらくネットワーク法務について経験を積んだ弁護士の可能性が高い。対象者が前提知識を有していて、その知識をさらに深めるために弁護士に来てもらっているという研修意図が想像できるから、弁護士としても付け焼き刃で話は出来まい。やはりその分野ではそれなりの経験値を積んでいると見てよさそうだ。

専門性を知りたければテーマを見る

 弁護士なら過半数が取り扱っているような法律問題、例えば、損害賠償だとか、債権回収だとか、借金整理だとか、相続・離婚などの家事問題だとか、こういうテーマで一般人相手に講演をしていても、その分野で突出した専門家とは限らない。なぜなら、多くの弁護士がこの分野ではいわば専門家だからだ。

 一方、弁護士の多くが日々取り扱っているとはいえないような法律問題、例えば、知的財産(著作権、特許権など)、会社再建(民事再生、会社更生。※破産は除く)、独占禁止法、個人情報保護・ネットワーク法務など(これらに限られない)をテーマとして講演を繰り返している弁護士は、その分野の専門家か勉強中か、いずれにせよその分野の取り扱い経験のある弁護士である可能性が高い。

 借金整理は、どの弁護士に頼んでも大差なさそうだが、特許紛争は、理解している弁護士に頼まなければ話にならない(弁護士側も引き受けないと思う)。講演等のテーマがどんな傾向にあるかで、その弁護士の専門性がある程度推測できるわけだ。

主催者が誰かを見る

 講演等の主催者が誰であるか、これも判断基準として重要だ。「弁護士会主催」の講演等で講師をしたことがあるかどうか、特に複数回類似のテーマで講演をしているかどうか、これが最もハズレのない判断基準だろう。弁護士会が主催する講演等であれば、必ずしも弁護士向けでなくとも、一般市民向けでも、講師はそれなりに専門家が登壇するはずだ。専門性に全く裏付けのない講師に弁護士会が講演を頼むことはあまり考えられないからだ。弁護士会で誰がどのような講演等をしているかは、弁護士会のウェブサイトを見ればわかる。

司法研修所教官とかどうよ?

 ところで、司法研修所教官はどうだろう。司法研修所とは、司法試験に合格した法曹の卵、司法修習生を対象とした法曹養成機関だ。ここで司法修習生に座学で授業を施している先生を司法研修所教官という。民事弁護、刑事弁護、民事裁判、刑事裁判、検察の5科目に対して教官がいる。それぞれ現役の弁護士、裁判官、検察官があてられる。法曹の卵に教えているんだから、司法研修所教官は、さぞかし実務家として優秀だろうと思われそうだ。

 しかし、専ら実務家としての手腕・経験値の高さだけで司法研修所教官に選ばれるわけではない。弁護士会で会務活動など実践して、弁護士仲間において人望がある弁護士、主としてこういう弁護士が司法研修所教官に選ばれる。もちろん、この人望の中に、研修所教官として推薦できる実務家能力が必須ではあるが、司法研修所教官経験が弁護士として偉いとかエリートという位置づけではない(裁判教官や検察教官は、どうやらエリートらしいと聞く。)。したがって、司法研修所教官の経歴を持つ弁護士は、弁護士会の会務を一生懸命頑張っていて、弁護士仲間から評価されている弁護士なんだな、仲間内の人望があるんだなと思っておけばよい。専門性や事件処理の経験値と言うよりも、仲間内での人望がある、こういう弁護士だ。

 弁護士選びにはその弁護士と依頼者との相性の見極めも大切なわけだが、司法研修所教官経験者とか、今後述べる弁護士会長・副会長など役員経験者は、弁護士としての実力が高いかどうかというよりも、人柄とか真面目さとか、こういう面で評価できる弁護士ということになる。特に弁護士会務は手弁当のボランティアに近いから、そういう会務を熱心に手がけて仲間内での評価が高いと言うことは、依頼するに際してもプラス評価をしてよいのではないだろうか。

次回以降予告

 次回はヤメ検、ヤメ判について語ってみようかと思う。要するに、検察官や裁判官を辞めた後に弁護士になった人、こういう人たちを弁護士選びの中でどう評価するかだ。

つづく

バックナンバー

 弁護士の選び方(1)・・・広告(総論)

 弁護士の選び方(2)・・・ホームページ(総論)

 弁護士の選び方(3)・・・学歴

 弁護士の選び方(4)・・・経験年数

 弁護士の選び方(5)・・・専門分野

 弁護士の選び方(6)・・・テレビ出演する弁護士

 弁護士の選び方(7)・・・本を書く弁護士

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