弁護士 小川義龍 の言いたい放題

 30年選手の弁護士小川義龍(東京弁護士会所属)が、歯に衣着せず話します。

弁護士の選び方(11)・・・初回相談時のチェックポイント・1

 勝手に連載「弁護士の選び方」も10回を超えた。これまでは、弁護士に実際に会うまでのことを書いてきた。そろそろ、実際に弁護士に会ってからのことも書き始めようと思う。その初回として、最初に弁護士と面談したときに何をチェックすればいいかについて書いてみよう。

第一印象

 まずやっぱり第一印象の観察だろう。第一印象として、どんな弁護士が優れているかという意味ではない。第一印象として、あ、なんかいい感じ、こういう自分自身の本能的な感覚は大切にしていいと思う。弁護士と依頼者とのつきあいは、何ヶ月何年という単位で続くわけだから、なんか、いやーな感じがする弁護士とこの先つきあってゆくのは、いかに仕事繋がりとはいえ苦痛だろう。いい先生なんだけど、肩に白く降り積もるフケが気になるとか、なんか酸っぱい臭いがするとか、そういうのは僕も勘弁だ。いや、そんな弁護士いないな。

 時々、先生の誕生日はいつですかと初見の相談者から尋ねられることがある。え、なになに、プレゼントでもくれんの?とか思いながら、昭和39年辰年、4月生まれの牡羊座、お昼頃に生まれたって聞いてます、あとB型です、自分中心に地球が回ってると思い込みやすいタイプですと、合コン自己紹介さながら聞かれてもいない情報まで開示して差し上げているが、たぶん相性占いでもしようとしているんだろうか。相性占い、大いに結構なことだと思う。これから自分の人生上の悩みを解決してもらうための高い買い物をしようとするわけだから、第一印象や相性占いや風水や自分の納得のいく全てを総動員して、吟味なさったらいいだろう。

説明のわかりやすさ

 さて第一印象はあくまでも本能的なもの。つまりは自分の「好み」に過ぎない。第一印象で一目惚れしても、あとになって、あれ、こんな人だっけ?と興ざめするのはよくあることだ。或いは、第一印象は大したことなくても、付き合うほどに味わいが出てきて大好きになる、これも世の常だ。そうすると、第一印象や八卦だけで決めるわけにはいかない。

 そこで重視したいのは、「説明のわかりやすさ」だ。その弁護士の話がわかるかどうか、すっと腑に落ちるかどうか、こういう素朴なレベルでわかりやすいかどうか、これを吟味したい。なんだか饒舌にたくさん説明してくれるんだけれども何を言ってるか今ひとつわからないとか、法的なアドバイスをして頂いているようだが理解できないとか、初見で「わからない」という印象を持ったら、その弁護士は自分には合っていないかもしれないと考えたらいい。

 弁護士は相手と闘う仕事であるけれども、自分の依頼者に納得してもらう仕事でもある。納得してもらうためには、現状や将来を十分理解して頂かないといけない。その説明がわかりにくかったら、依頼者としては正しい理解に至らない。

 坊さんのお経はわからないのが有り難いが(※あれ、わかっちゃったら結構どーでもいいことも言ってます)、弁護士の説明は容易に理解させてくれるかどうか、これが大事だ。

どんな説明がわかりやすいのか

 たとえば平気で法律用語を駆使して語る弁護士。これはイケてない。相談者が企業の法務担当者であるとか、前提知識をそれなりに持っている相手であれば、法律用語でも会話が通じるし、その方がむしろ早い。

 しかし例えば、遺産相続の相談に来ている方に、「イゴンある?コウセイショウショイゴン。」とか「イリュウブンゲンサイした方がいいですよ。イリュウブンゲンサイ。わかる?」とか、こういうしゃべり方をつらつらしちゃう弁護士は、きっと不親切だ。遺言(いごん)だの遺留分減殺(いりゅうぶんげんさい)だの、普通の人はわからない。ネットなどで予習してきて、多少わかっている場合があるかもしれないけれども、それでもだいたい微妙に間違った理解をしている。だから、「ゆいごんしょ、ありました?」とか「ゆいごんしょに一切渡さないって書いてあっても、一定の部分は受け取る権利があるので、そうできるような請求をすぐした方がいいですね。遺留分減殺請求って言うんですけど」とか日常用語に置き換えたり、俗な説明をしたり、こういう相手の様子に合わせた当意即妙な説明をしてくれるかどうかが大事ではないかと思う。

 相手のわからないことがわかる、こういう弁護士がイケてると思う。

具体的ソリューションが含まれているかどうか

 ソリューションとか言っちゃった。ちょっと使ってみたかっただけだが、要するに具体的解決策をはっきり提案してくれるかどうか、これも大事だ。

 弁護士によっては、「わあ、大変だよね。うんうん、わーかーるー。一緒に頑張ろうね。元気出して」と、なんだかガールズトーク並みの理解は示してくれるんだが、じゃあどうやって頑張るのか、弁護士は何をして自分は何をすればいいのか、それをはっきり提示してくれない弁護士がいる。これって、その弁護士は、相談内容が理解できていないか、相談内容に関する法律分野の経験不足で今すぐには解法を提示できないか、ともかく金もらってさっさと稼ぎたいだけか、この辺ではないかと思う。

 解法を具体的に提示できる弁護士。できればそれも複数。これが経験豊富な弁護士だ。

質問にちゃんと答えてくれるかどうか

 ところで、弁護士に質問したときの反応も観察したい。質問されると、イラっとした反応を示す弁護士がいる。「だーかーらー、さっき言ったけどー、いごん書にモチモドシメンジョが書いてあるんだから、特別受益とか言ったって無駄なんですよ。わかる?」と繰り返されても、はい、わかりませんとしか言いようがない。ぼうけんの書から何の呪文を取り出したんだろうという程度にしか思えない。持戻し免除がよく理解できないから質問をしているのに。あげく、「まあ、その辺は難しい話だから、わかんなくても大丈夫。悪いようにしないから僕に任せて」と、「難しい話」でくくってしまって面倒くさがって説明をしない。こういう弁護士だと、この先、なにか質問しても、延々同じ回答が帰ってくると思ってよい。面倒くさがり屋のダメ弁である。

「任せろ悪いようにはしない」と「大風呂敷」の危険性

 古いタイプの弁護士に多そうだが、俺に全部任せろ系、これはもはや時代遅れだ。依頼者としては全部任せて、結果だけ出してもらいたいと思う人もいるだろう。その方が気分的には楽になる場合もある。しかし、依頼者が思いどおりの結果が出るとは限らない。医師同様、弁護士もインフォームドコンセントが重要な時代だ。依頼者の重要な財産を扱うのが弁護士の仕事だから、依頼者にはしっかりと状況理解して頂きたい。だから、依頼に先立って、この先、起こりうるリスクや、複数の解決策があればそれぞれのメリットデメリットをしっかり説明できる弁護士、これがちゃんとした弁護士だ。

 この点、「大丈夫、これは行けますよ。勝てます。うん、今でしょ!」と初回相談から太鼓判を押してしまう系。これは危ない弁護士だ。依頼者とすれば、弁護士が自信満々、このように最初から言ってくれるのは一見頼もしく映るわけだが、実はこういう発言は、たいがい大風呂敷だ。つまり大風呂敷広げた営業トークであることが多い。相談の当初から、そんな自信満々大丈夫だの勝てるの、そんなことは慎重な弁護士なら言えっこない。やるなら今でしょ!なんて、予備校か通販番組のお申し込み殺到してます今なら間に合いますトークと一緒だ。

 むしろ、勝てそうに見えても、1パーセントのリスクをほじくり出して、勝てる可能性は十分あるけれども、こんなリスクがありえます、こんなリスクもありえます、あ、こっちから光を当てると結構ヤバそうです、だから慢心せず慎重に準備して臨んだ方がいいですと、石橋を叩いて渡るコメントを出す弁護士。これが優れている。わずかなリスクでも瞬時に次々提示できるということは、それだけ経験値が高いからこそだ。

 この先生、ちょっと臆病すぎるんじゃないかな、というくらいに初見から事件の見通しに次々ネガティブな障害を発見してコメントできる弁護士。こういう弁護士こそ実は任せて安心だ。最初から見えている小さな穴はちゃんと塞ぎながら仕事をして、最後には危なげなくちゃんと結果を出すことになるからだ。

報酬の明快さ

 そして一番重要なのが報酬の明快さだ。

 報酬の説明はだいたい相談の最後に来るのが普通だろうから、そこまで会話していたら、この弁護士の話は分かりやすいかどうかだいたい感触をつかんでいることだと思う。〆となる報酬の説明でも、十分理解できる説明をしてくれるかどうか、ここを最後に押さえておきたい。

 現在多くの弁護士が、受任時に着手金を頂戴し、事件終了時に報酬金を頂戴するという、最初と最後に二段階で依頼者にお支払いして頂く報酬形態を採っていると思う。この着手金は、現時点で具体的に幾らになりますと提示できるのでわかりやすい。しかし、報酬金は将来支払ってもらうもので、かつ、成功の程度に応じて割合的に増減額するような報酬体系の場合には、具体的に幾らになるかが現時点ではわかりにくかったりする。私の事務所では事件難易度に応じた固定報酬制なので着手金も報酬金も一律固定のため説明しやすいが、そういう事務所はまだ少ないと思う。そうすると将来請求される報酬金がどのような場合にどのような計算で算出されるのか、よく理解できるまで説明を求めておいた方がいい。

 相談の中身に対する説明もわかりにくいし、報酬についても説明を面倒くさがる弁護士はダメ弁確定である。もう箸にも棒にもかからないと言ってよい。なお、報酬に関しては口頭で説明するだけではなく、しっかりと契約書等文書化しておくのが弁護士業界の決まりなので、受任時にしっかりそういう書類のやりとりをする弁護士かどうかも観察しておくように。もちろん、逮捕されて留置場にいるとか、そういう緊急時に、いちいち契約書に全部サインしてもらわなければ何も動きませんというような杓子定規な弁護士は、それはそれでダメ弁であるが、この辺は常識判断にて。

次回予告

 次回も、引き続き初回相談時のチェックポイントを語ってみたい。挨拶するだけで事務員任せの弁護士とか、丸投げ系ボス弁とか、まあその辺。

(つづく)

バックナンバー

 弁護士の選び方(1)・・・広告(総論)

 弁護士の選び方(2)・・・ホームページ(総論)

 弁護士の選び方(3)・・・学歴

 弁護士の選び方(4)・・・経験年数

 弁護士の選び方(5)・・・専門分野

 弁護士の選び方(6)・・・テレビ出演する弁護士

 弁護士の選び方(7)・・・本を書く弁護士

 弁護士の選び方(8)・・・講演する弁護士

 弁護士の選び方(9)・・・弁護士会長とか

 弁護士の選び方(10)・・・ヤメ検・ヤメ判

 連載中

小川綜合法律事務所
〒160-0004 新宿区四谷1-18-5 綿半野原ビル別館5階
Tel:03-5368-6391 / office@ogawalaw.com
Copyright(c) 2014 Ogawa & Associates Law Offices All Rights Reserved.