弁護士 小川義龍 の言いたい放題

 30年選手の弁護士小川義龍(東京弁護士会所属)が、歯に衣着せず話します。

弁護士の選び方(18)・・・無料法律相談を提供する弁護士

ありがちな無料法律相談

私もそうだが、無料法律相談を提供している弁護士は多いと思う。

もちろん、無料法律相談といっても無制限なものではなく、30分とか1時間程度まで、初回のみ無料と限ったものが殆どだろう。そうしなければ、無制限に法律相談ができることになって、無料で顧問弁護士を提供するのと同じになってしまう。

このように一定の制限はあるものの、よく見かける無料法律相談であるが、弁護士としてはどういう意図で無料法律相談を提供しているのか。

ボランティアで提供しているわけではない

弁護士は社会奉仕的なプロボノ活動を行うことも多いわけだが、弁護士会や法テラスが提供する無料法律相談と違って、個々の弁護士が提供する法律相談は、ボランティアを主目的としてやっているわけではない。もちろん、社会奉仕的・ボランティア的な意識は少なからずあるけれども、個々の弁護士としてボランティアばかりやっていては、事務所経営や自分の生活が成り立たなくなる。費用を頂戴して相談・依頼して頂いている方とのバランスもある。

そこで、弁護士の意識として無料法律相談では、「法律問題を抱える人に対して、自分のことを知ってもらいたい」という意識が大きいと思われる。

弁護士に依頼するのは高い出費を伴うこと

弁護士のところにわざわざ法律相談に行く人は、おそらく吃緊に解決したい法律問題を抱えている人だと思う。これが相談だけで解決できれば幸いだが、相談だけでは終わらず、弁護士に依頼しなくて解決しない状況の人も多いだろう。例えば、裁判で訴えられたとか、そういうケースだ。

この場合、既に知り合いの弁護士だとか、信頼できる誰かに紹介してもった弁護士だとか、そういう弁護士がいればいいが、いなければ自分で弁護士を探すことになる。

かくして、見ず知らずの弁護士を探して相談するとして、問題は高い出費だ。これが相談だけであれば、仮に有料であってもだいたい相談料は30分5000円くらいから1〜2万円程度であることが多いだろうから、仮にその弁護士と自分との相性が悪くても、まあ我慢できるだろう。しかし、訴訟だとか示談交渉だとかを依頼して、これから長い付き合いを始めるとなると、自分との相性が悪いと困る。訴訟や示談交渉となれば弁護士費用は最低でも数十万円かかることになるし、解決までの時間も示談交渉なら最低数ヶ月、訴訟なら年単位でかかる可能性があって、その間、その弁護士とコミュニケーションを取り続けなくてはならない。

このように弁護士に依頼するのは高い出費を伴うため、実際に依頼する前に、その弁護士の人となりや仕事ぶりを垣間見るために、無料法律相談を提供するという、こういう意識の弁護士が多いだろう。要するに、依頼前の「試用」「お試し」だ。

無料法律相談で何を試せばいいか

さて、無料法律相談は、依頼前の弁護士のお試しであるとして、30分とか1時間程度の無料法律相談の中で、相談者として何を試したらいいかというと、

・質問に対してはっきりストレートに受け答えをしてくれるかどうか

・説明がわかりやすいかどうか

・勝てる勝てるとバラ色の見通しだけ語られていないかどうか

・今後のリスクなど不安を覚える事柄でもちゃんと問題点として提示してくれるかどうか

・是非依頼してくれと執拗に依頼を勧誘しないかどうか

・報酬に関する説明が具体的でわかりやすいかどうか

・その弁護士の雰囲気(顔つきでもしゃべり方でも気配でも何でも直感で受け取る印象)が自分にとって受け入れられそうかどうか

・事務所の雰囲気(お茶を出してくれる事務員さんの様子とか事務所の雰囲気とか)が自分にとって納得できそうかどうか

この辺を観察してみたらいいだろう。

無料法律相談には過大な期待をしないこと

このように、依頼に備えて自分を知ってもらう場として無料法律相談を提供していることが多いので、相談者側としては無料法律相談に過大な期待は禁物だ。

例えば、相談前に大量の資料を送付して、これを十分精査して法律相談に臨んで下さいというようなリクエストは断られることが多いだろう。なぜなら、何の説明もなく資料だけを精査しても弁護士として的確な分析はできないし、そもそも資料の分析に時間を取られるわけだから、そこまで無料奉仕を依頼前の弁護士に求めるのは無理だろう。したがって、この場合には法律相談の際に説明しながら一緒に資料を見てゆくことになる。

また、無料法律相談は何時間も何回も提供するわけではないので、30分とか1時間では、ひととおりの相談をして、その相談内容に応じたコメントをするくらいで終わってしまうだろう。したがって、無料法律相談だけで自分が抱えている問題が解決できるとは思わない方がいい。あくまでも、イントロダクションと考えて、その初回の無料法律相談でその弁護士が好印象であれば、引き続き次回の法律相談を予約してみればいいので、そういう流れの端緒だと理解しておくのがいいだろう。法律問題は一朝一夕には解決しにくいのである。

複数の弁護士に相談してみるのもよい

無料法律相談であれば、高い相談料の出費はないから、依頼を考えている場合には、複数の弁護士に同時並行して相談をしてみるのもいいだろう。結果として自分の思ったような弁護士ではなかったとしても、相談料がかからなければ相談者の実害は少ない。そして、比較検討して自分と相性がよく信頼できる弁護士を選定すればよい。

このとき、相談時に、複数の弁護士に相談していることを明かしてみたらいいだろう。複数の弁護士に相談していると明かしたところ、不機嫌そうな顔をする弁護士だとか、他の弁護士より自分に依頼してくれと強く勧誘する弁護士は、ちょっと考え直した方がいいかもしれない。

信頼できる知人経由での紹介は大きい

なお、信頼できる友人知人から弁護士を紹介してもらえることがある。

その友人知人に予めその弁護士の何がよかったのかを聞いておけるので、自分で一から探すより有益なことがある。ただその場合でも、紹介だからと無批判に依頼してしまうのではなく、最初の相談でよく弁護士を観察して、本当に自分に合いそうかどうかを見極めることが重要だ。紹介者の手前、よく検討せずに依頼したところ、後日どうも相性が合わなくて弁護士を変えたいという人は少なからず居るので、紹介者がいても、弁護士をよく観察してから依頼したい。

一方、ネット口コミサイトからの情報だけで選ぶのはリスクがある。

弁護士の場合、依頼リピーターは少なく(法律問題はそう次々生起するものではない)、食べログのように日常大量消費が繰り返されるサービスではないから、ある人のある事件にとってその人が満足・不満足であったからといって、必ずしも他の人の別の事件に同じ評価が当てはまるとは限らない。人対人の無形サービスだから、依頼者と弁護士との感覚的な相性もある。このため、見ず知らずの人のネット口コミだけで門前払いするのではなく、実際に会って相談してみることをお勧めする。そのための無料法律相談である。

 

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