弁護士 小川義龍 の言いたい放題

 30年選手の弁護士小川義龍(東京弁護士会所属)が、歯に衣着せず話します。

面会交流拒否で親権者変更

福岡家庭裁判所 平成26年12月4日決定 

 離婚後の親権者である母親が、父親に子供を面会させないということで、父親に親権者が変更された事例がある。毎日新聞の記事によると、次のとおりだ

「離婚などが理由で別居する親と子供が定期的に会う「面会交流」を巡って、離婚して長男(7)と別居した40代の父親が、親権者の母親が拒むため長男と会えないとして、親権者の変更を申し立てた家事審判で、福岡家裁が父親の訴えを認め、親権者を父親に変更する決定を出していたことが分かった。虐待や家庭内暴力が理由で親権者の変更が認められるケースはあるが、面会交流を理由にした変更は極めて異例。
 決定は昨年12月4日付。家裁は「父親と長男の関係は良好だった。円滑な面会交流実現のためには親権者変更以外に手段がない」と判断した。
 審判などによると、夫婦は関東地方に住んでいた。父親が2010年3月、東京家裁に離婚調停を申し立て、双方が長男の親権を求めた。別居し、調停中は1週間交代で長男と同居して世話(監護)することで合意したが、11年1月以降は母親が長男と住み、父親は月3回、長男と面会できるよう協議で変更した。ところが、長男が次第に面会交流を拒むようになった。
 母親は11年4月、長男と福岡県内に転居。11年7月、月1回の面会交流を条件に母親が親権者となり調停離婚が成立した。しかし、面会できなかったため父親が12年9月、親権者変更を福岡家裁に申し立てた。」

 決定書を入手できていないので、あくまでもこの報道を前提として少し考えてみたい。

結論において画期的な決定

 これが確定した決定であるかどうかわからず、また、一般化もできないから闇雲に評価するわけにはいかないのだが、それでもこのような結論の決定は貴重だ。

 面会交流の履行確保は、切実な問題になりがちだ。

 というのも、たとえ裁判所で面会交流条件をしっかり取り決めたとしても、実際に面会交流を実施しようというときに、「今日は体調が悪い」「今日は天気が悪い」などと適当な理由を付けて面会交流を拒まれることがよくあるからだ。面会交流が争いになっているケースは、たいがい親権者ないし監護者が面会交流に消極的な態度が前提となっている。しかし、面会交流は子の福祉のために認められる法的権利であるから、単に会わせたくない、嫌だ、というだけで拒むことはできない。だから、会わせる側は、もっともらしい理由を付けて会わせないようにしてしまうわけだ。

離婚と子ども

 離婚ないし別居は夫婦間の仲違いであり、決して子どもとの離縁まで含むものではない。離婚に伴って、共同親権が解消され、一方だけが親権者にならざるをえないものの、それは子供と縁が切れると言うことではない。子供にとっては両親と触れあいつつ成育することこそ大切なのであって、決して親の憎しみを子に反映させてはならないのである。

 だからこその面会交流であり、面会交流は子供のために大いに実施されなくてはならない。これを妨げるような親権者や監護者の態度は、相手に対する嫌がらせにはなっても、子供の成育にとって有害であることを知るべきであろう。そしてその度が過ぎると、この決定のように、自分にしっぺ返しが戻ってくる。

面会交流を不当に拒む者に対する警鐘

 このような決定が出たとはいえ、面会交流を拒んだというだけで、親権者変更されるケースが、今後一般化するとは到底思えない。面会交流と親権とはやや次元の異なる問題であり、法的安定性の観点からすれば、そう簡単に裁判所が親権者変更することはない。

 しかし、面会交流を不当に拒む者があとを絶たない現実に対して、あまりに酷い態度を取ると、子供を取り上げてしまいますよという裁判所からの警鐘と考えれば、実にすっと腑に落ちる結論だ。

 

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