弁護士 小川義龍 の言いたい放題

 30年選手の弁護士小川義龍(東京弁護士会所属)が、歯に衣着せず話します。

領収書と不正経費

 昨年、兵庫県議会の某議員が号泣会見して以来、政務活動費の調査が広がっているようだ。今さら感はあるものの大いにやって頂きたい。この政活費調査に関して、こんなニュースがあった。


 相変わらず、私的利用と思われるような支出を政活費としているケースがあるようだ。本当にこれが専ら私的利用であれば詐欺だ。今日は領収書と経費について、当たり前の話をする。

人ごとではないよ

 この問題は、政治家に限った話ではない。民間であっても、領収書の不正利用は犯罪だ。たとえば、レストランで明らかに家族で食事をしているのに、領収書をもらっている人がいる。もちろんこれが必ずしも全て不正利用ではないだろう。家計簿に貼っておくためだとか、あとで親からもらうためだとか、割り勘にするためだとか、いろいろあると思う。しかし、中には不正利用している人がいそうな予感もある。

会社員の場合

 会社員の場合。例えば営業経費の枠内で、家族で食事をした領収書を会社経理に提出して、食事代金相当額を会社から受け取る。これって詐欺だ。会社から認められている営業経費は決して給料でもお小遣いでも自由自在に使えるお金でもない。あくまでも会社の営業上必要かつ相当な範囲内で利用を認められている会社の金だ。家族での食事は会社の営業に普通役立っていない。家族で食事をしましたといって領収書を会社経理に出してもハネられるだけだろうから、出すときにはそのようなことは言わない。だから、詐欺だ。

自営業の場合

 自営業の場合。特に個人事業主の場合は、家族で食事した領収書を経理担当者に黙って渡して金をもらったところで、結局自分の金を出しただけのことだから、これ自体が詐欺になるわけではない。

 しかし、自営業者であっても、仕事と無関係に家族で食事をした領収書を経費として計上して税務申告をしたら、これは脱税ということになる。本来払うべき税額が、その食事代金を経費として使った分少なくなるわけだから脱税だ。家族での食事は、通常仕事の経費(=仕事の売上げに役立ったお金)とは言えないだろう。

領収書渡す方も気をつけようね

 一方、飲食店側も、明らかに認められそうもない会社経費や脱税用経費として使うことを薄々知りながら領収書を出していそうな場合がある。日付は入れますか?いつにしますか?とか、金額書きますか?といった尋ね方をするのは、なんとなく怪しく見えてしまう。特別な事情があるのかもしれないが、領収書は、払った金額そのままと、お金を払ったその日付を書くべきものだ。日付や金額を入れなかったり、別の数字を書いた領収書の正当な使い道が多いようには思われない。

 休日付の領収書だと会社に出しにくいとか、店では1万円しか使っていないのに領収書にはあとで5万円と自分で書き入れて使っているんじゃないかとか、そんな勘ぐりをしてしまう。日付や金額に限らず、白地領収書は、どうもしっくりこない。

罪無き者、先ず石を撃て

 結局、政活費問題は、世間一般の「人の金」に関する、ゆるい意識の投影ではないかと思う。我々の鏡なのだ。政治家だけを他人事のように非難しても改善はなく、世間一般が、人の金から経費を頂くことがどういうことなのかをよく考え、自省の心がけを持つ必要がある。

 私はクリスチャンではないが、皆が自分とは別世界の話のように政治家を誹るのを見るにつけ、「罪無き者、先ず石を撃て」という聖書の言葉を思い出す。

 

 

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