弁護士 小川義龍 の言いたい放題

 30年選手の弁護士小川義龍(東京弁護士会所属)が、歯に衣着せず話します。

弁護士の選び方(15)・・・営業電話をかけてくる弁護士

法律相談に行ったらその後弁護士から電話がかかってきた

以下、相談者から聞いた話である。

"ある法律事務所に相談に行ったところ、相談内容に対するコメントもそこそこに、とにかく早く契約した方がいいと依頼を勧誘された。検討しますと言うことで帰ったら、その後、その法律事務所から電話がかかってきて、依頼の件はいかがでしょうか検討頂けましたかと勧誘された"・・・というのである。

相談者に対して弁護士が依頼を自薦すること自体は、必ずしも常に不当な行為ではない。しかし、このような弁護士は少ないはずだ。

多くの弁護士は普通、営業電話はかけない

弁護士は無差別の勧誘ができないことになっている(日弁連:弁護士等の業務広告に関する規程)。但し、これは「面識のない者」に対する無差別広告の禁止であるから、法律相談によって面識のある相談者に対して、相談した事件につき弁護士が自薦をすることまでこの規程が禁止しているわけではない。

しかし、弁護士の最重要規範である日弁連:弁護士職務基本規程 第10条によると、「弁護士は不当な目的のため又は品位を損なう方法により事件の依頼を勧誘し又は事件を誘発してはならない」と規定されている。この規定を解説した日弁連弁護士倫理委員会のコンメンタールによると、ここに禁止される「品位を損なう方法」として、「依頼者あるいは依頼者となるべき者の窮状に乗じて、実際に発生している事件の依頼を直接働きかける行為(いわゆるアンビュランス・チェイサー)が含まれる」とされている(解説 弁護士職務基本規程 第3版 24頁)。また禁止される「事件の誘発」として、「訴訟の提起などの法的手段をとる意思のない者を煽って、訴訟の提起などの法的手段をとるように働きかけることをいう」とされている(前同 25頁)。

したがって、法律相談をした相談者を追いかけて弁護士が電話して自薦営業をすることは、その内容によっては、弁護士職務基本規程に牴触して懲戒事由となる可能性がある。

このため、相談だけで終わった相談者に対して、その後いかがですかという営業電話をかける弁護士は、一般的に少ないはずだ。

弁護士業務は大量顧客の事件処理ができる業態ではない

そもそも弁護士業務は、一件一件が依頼者ごとのオーダーメイドであって時間がかかる。しかもそれをもっぱら弁護士が行って他人には下請けさせられない。したがって、大量に顧客獲得して大量生産処理できないのが弁護士業務である。このため、弁護士一人一人の限られた時間の中で処理できる仕事量、即ち依頼者数は自ずと限られざるをえず、是非ご用命下さいと次々依頼してもらうような業態ではないのが原則だ。そんなに次々依頼者が増えてしまったら、独りの弁護士の限られた時間内で事件処理ができずにパンクしてしまう。

それを次々あたりかまわず事件受任しようという弁護士・法律事務所は、私の主観的推測からすると、

・弁護士が自分で業務せず、非弁護士の事務職員に丸投げして事件処理させている(※ちなみに、このような事件処理方法は、非弁行為として禁止されている:弁護士法72条ないし74条並びに弁護士職務基本規程11条)、

・弁護士が自分で業務するにしても、手抜きして大量処理しようとしている、

・依頼者のために仕事をするのではなく、弁護士や事務所の利益のために(=お金のために)仕事を集めようとしている。依頼者のためになる結果はどうでもいいと思っている、

・あまりにも依頼が少なくて暇なので、誰でもいいから事件の依頼をしてもらいたいと思っている(※弁護士の能力があるのかどうか少し心配)

こういった可能性がありうると思っている。

経験上、相談の全てが法律問題にはならない

また、法律相談を受けていると、経験上、かなりの相談が弁護士が取り扱うべき法律問題ではないことに気付かされる。例えば、遺産相続で困っているとの相談でも、単に相続税の節税だけの話であったとすれば、これは弁護士よりも税務対策に経験豊富な税理士に相談した方がいい場合が多いだろう。また例えば、友人同士で軽い口喧嘩をして負けて悔しい思いしたので相手に慰謝料を請求する裁判を起こしたいという相談であった場合、弁護士のコメントとしては慰謝料の法的な考え方や裁判の仕組みなどを理解してもらって、こういうケースを法律問題として弁護士が介入するのは難しいので(=弁護士費用がもったいないので)諦めてもらうことになろう。

このように相談者としては弁護士に依頼すべき法律問題だと思って相談に来ていても、実際は、弁護士が受任しない方がいいか、別の専門職を紹介した方がいいか、弁護士費用のかけがいがないことが初めからわかりきっているから依頼をお勧めしない場面も多い。

したがって、法律相談を受けていると、依頼を勧誘するどころか、依頼を諦めてもらうように説得する場面や、どうしても依頼したいなら引き受けることも検討できるが結論は見えており弁護士費用を捨てるだけになるので依頼はお勧めできないとしてお断りする場面などが意外と多いというのが現状だ。

早急に弁護士が入った方がいい場面もある(例外1)

もっとも、例外的に弁護士の側から、至急弁護士を依頼した方がいいと積極的に依頼をお勧めするケースもある。

例えば、暴力団に脅されているとか、ヤミ金に職場まで取り立てに来られているとか、或いは無実の罪で逮捕されたとか、そういう急迫性のあるケースだ。この場合は、大至急弁護士を依頼して進めた方がいいですよとアドバイスする。しかしこの場合でも、是非私に依頼して下さいと勧めることは少なく、私でもいいし、この件に経験豊富な弁護士なら私以外の弁護士でもいいので、一刻も速く自分の信頼できる弁護士を探して依頼した方がいいと伝えることになる。

それでも、その後相談者から依頼がなかった場合、頭の片隅であの相談者どうなっただろうなあ、無事かなあと心配するものの、わざわざ追っかけて電話してまで依頼の有無について連絡することはない(さすがにこれが親戚や親しい友人だったら、本当に心配なので電話するかもしれないが)。

曖昧な状況では確認の電話はせざるをえない(例外2)

また、相談時に相談者から依頼するようなことを言われ、裁判の予定期日も差し迫っているような時に、念のため、依頼なさるのですかという確認の電話を入れることはあるだろう。相談者としてはすっかり依頼したつもりになっているのに、弁護士側は委任状も着手金ももらっていないということで依頼を受けていないつもりで、期日を放置して相談者が欠席判決を受けてしまったら面倒なことになる。

したがって、依頼意思が曖昧な場合に、これをはっきりさせるための確認電話は例外的にありうるだろう。それでも、依頼して欲しいという勧誘をするわけではなく、依頼意思を明確にするための確認の限度で電話する程度だろう。

営業の香りのする弁護士はちょっと違うかも

結局、一見で相談に行っただけなのに、その後を追っかけて電話をかけてくる弁護士(法律事務所)や、とにかく自分を依頼しなさいと強く自薦営業する弁護士は、私の価値観からすれば、ちょっと違う気がする。こういう弁護士は、僕は依頼するのはやめた方がいいと思っている。

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