弁護士 小川義龍 の言いたい放題

 20年選手の弁護士小川義龍(東京弁護士会所属)が、歯に衣着せず話します。

裁判に勝つためには(4)・・・三審制

 これまで、主張立証の話をしてきた。今回からは、裁判に勝つためのポイントを、別の観点からいくつか話してみよう。

 まずは三審制について。

日本の裁判は最初(第一審)が勝負

 日本の裁判は三審制といって、一つの争いごとについて三回裁判できることになっている。こんな仕組みは、小中学校の社会科で習っただろう。

 学校で習ったイメージによると、三回戦勝負が行われるような気持ちにならないだろうか。一回戦で負けても、気分一新して二回戦でまたはじめから勝負すればよい、それに負けたって三回戦目があるぞと。

二回目(控訴審)は裁判のやり直しではない

 しかし、仮に最初の裁判、つまり第一審で負けた場合、二回目の裁判、つまり控訴審は、一回目の裁判のやり直しをしてくれるわけではない。ここが皆さん勘違いしているところだ。

 二回目の裁判は、一回目の裁判の延長で、新たな証拠などがあれば追加して出しても良いという程度の補充的なものに過ぎない。これが刑事裁判になるともっと厳しくて、新たな証拠すら簡単には出せず、一回目の裁判の内容が間違っていたかどうか、つまり判決にミスがあったかどうかを検討する場でしかない。

 心機一転、最初から裁判をやり直すわけではないのだ。だから、普通、控訴審はあっという間に終わる。例えば民事事件の第一審が一年以上かけて何回も期日が入っていたのに対して、控訴審は一回の期日で終わってしまうことも多い。

第一審で負けていたら、だいたい控訴審でも負ける

 だから、第一審(一回戦)で負けていたら、控訴審(二回戦)でも負けることが多い。

 なぜなら、第一審で出せなかった証拠を新たに控訴審で追加するということはあまり考えられないからだ。控訴審で続々と新証拠を出せるということは、とりもなおさず、第一審で手抜きをしていた(出すべき証拠を出していなかった)ということになってしまうからだ。

 そして、特に決定的な新証拠も出さずに第一審と同じ証拠で勝負する限り、控訴審でも同じ結論になるのが普通だろう。なぜなら、事実認定とは、証拠を常識的に見た場合の推論の結果だから、同じ証拠である限り、常識的に同じような結論になりやすいはずだからだ。

 とはいえ、特に民事の控訴審では、逆転判決という事態もそれほど珍しいことではない。常識的な証拠の評価といっても、判断する人が変われば微妙に常識のぶれも出てくる。常識判断とは、なかなか難しいものだ。

三回目(最高裁)は無いと思って下さい

 第一審で負けて、控訴審でも当然負けて、そして最後の砦の最高裁判所への上告、つまり最終ラウンドの三回戦。

 これは無いと思っておいた方がよい。

 なぜなら、最高裁判所の上告事件は、第一審や控訴審とは、そもそも裁判の仕組みが違うからだ。簡単に言えば、最高裁判所では、多くの当事者が不満に思う事実認定については判断してくれないのが原則だ。裁判に負けて不服に思うのは、裁判官が自分の言い分を聞き届けてくれなかったという点にある。それはまさに、自分が考えている事実を認定してくれなかったという不満だ。だから、再々度、裁判をやり直したいと考えるわけだろう。

 しかし、控訴審ならこの事実認定に誤りがあったかどうかを再検討してくれるが、最高裁判所の上告審では、事実認定の誤りを再々検討してくれることは原則としてない。

 では、最高裁判所はなにをするのかというと、第一審や控訴審の判決に、法令上の誤りなどが無かったかということを検証する。法律を誤って適用してしまったとか、法律の手続に正しくのっとっていないとか、そういうことがなかったかどうかを検証するのが上告審だと思えばよい。となれば、プロの裁判官たちが、第一審と控訴審と二度にわたって慎重に裁判している以上、法令上の誤りや手続に正しくのっとっていないというような事態は普通ありえない。そして事実認定は再々検討しないから、結論は変わらない。

 こんな感じで、最高裁判所の上告事件で、逆転されるということは、まず無いと思って下さい。

結局、第一審に一番力を入れるべき

 そうすると、裁判に勝つために一番力を入れるべきポイントは、第一審を真剣に戦い抜くことだ。

 ときどき、第一審の弁護士がいいかげんで負けたので、控訴審に敏腕弁護士を就けて巻き返しを図りたいと相談に来る人がいる。確かに控訴審ならまだ巻き返しができることもあろうが、しかしそれでは遅い。

 第一審の弁護士がいいかげんだと感じたのであれば、第一審の判決が出てしまってから弁護士を替えるのではなく、第一審の途中で、それもできるだけ早い段階で、弁護士の交代を検討すべきだ。交代を検討するために、別の弁護士にセカンドオピニオンを聞きに行ってもいいだろう。

 第一審の充実、これこそが裁判に勝つためのポイントだ。

つづく

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