弁護士 小川義龍 の言いたい放題

 30年選手の弁護士小川義龍(東京弁護士会所属)が、歯に衣着せず話します。

弁護士の選び方(20)・・・初めての法律相談で準備すべきこと

法律相談に臨む前の準備

 初めて法律相談に行く際に、何か準備することがあるか気になる人は多いだろう。そこで今回は、この点をお話ししよう。

 初回の法律相談で、弁護士のことを見極めるのが弁護士の選び方として重要であることはこれまで何度かお話してきた(第11回第12回第18回など)。その初回の法律相談は、だいたい30分から1時間程度であろうから、要領よく相談しないと、弁護士を見極める前に相談が終わってしまう。だから、事前の準備は重要だ。

相談に関係する資料

 まず、相談内容に関する資料があれば、当日、是非持参したい。

 例えば、裁判を起こされたとか、相手の弁護士から内容証明が届いたとか、そのように相談のきっかけそのものである書類は必ず持参したい。特に、裁判書類は、訴状・証拠・期日の呼出状などが一式、裁判所の茶封筒で送られてくるはずなので、これは漏れなく持参してもらわないと、相談を受けても正しく回答できない。

 また、こちらから裁判を起こしたいとか、こちらから相手に何か法的請求をしたいとか、こちらがアクションを起こす側である場合には、客観的な証拠資料があれば持参してもらうと正しく見通しをつけやすい。例えば、貸したお金が返ってこないので請求したいとの相談なら、借用書などがあれば見せてもらいたいし、借用書などがなくてもメールやLINEでやりとりしたことがあれば内容を見せてもらいたい。

 もちろん、何も客観的資料がないケースもあるだろう。例えば、離婚したいという相談で、配偶者との過去のエピソードは、録音や写真があるとは限らないので、口頭で説明するしかない場合も多いだろう。それならそれで構わないので、相談内容に関する資料があれば持参する、なければないでも構わない、このように考えて頂ければいい。

相談内容を整理したメモ

 相談時に、相談内容を簡単にまとめたメモを持参する相談者がたまにいらっしゃる。

 このようなメモは必須ではないが、あれば弁護士側としては結構ありがたい。最初の相談時間は1時間程度までかと思うので、前提事情などをある程度箇条書きでまとめたメモを見せてもらえれば、聞く側としても要領よく事案を理解できる。

 この場合のメモは、あくまでも初回相談を要領よく進めるためのものであるから、長々とした内容では、読んでいる時間だけで相談時間がなくなってしまうから逆効果だ。せいぜいA4で1〜2枚程度までの、箇条書きで事実関係だけ書いた簡単なもので十分だ。例えば、遺産相続で関係者が多数いるような場合であれば、相続人をチャート図にしてもらうと有り難いし、交通事故の場合であれば、どんな形で事故が起こったのか、手書きでいいので現場が図示されているとわかりやすい。

相手から主張されそうな言い分を想像しておく

 相談者は、自分の主張やその主張を支える事実だけを弁護士に訴えがちだ。

 もちろん、その主張が法的に通るものかどうか、今後勝てる可能性があるかどうかを法律相談するわけだから、自分の主張や自分に好都合な事実を教えて頂くのは一番重要なことだ。しかし、それだけ伝えてもらっても、正しく法的判断ができない。弁護士は、第三者だから、ご本人から伝えてもらった事実以外はわからない。

 このため、相談者に都合のいい言い分だけを聞いて事案を進めていってしまうと、後日、相手方から思ってもみなかったことを反論されて、そんな反論がありえたなら、もっと違う進め方があったのにという事態になりうる。

 したがって、弁護士には、自分の言い分だけではなく、自分にとって不利な事実なども包み隠さず全部最初から伝えておくべきだ。自分に好都合な事実だけ伝えていては、弁護士は判断を誤る。だから、相談に先立って、自分の主張に対して、相手はこんな反論をしてくるかもしれないとか、自分の主張に対してはこんな不利な事実があるということを頭の中で整理をして、弁護士に相談時にちゃんと伝えられるようにしておくのがいい。

 弁護士には、良いことも有利なことも悪いことも恥ずかしいことも、最初から全部伝えておく、これが重要だ。

初回相談の前に資料やメモを送られても事前検討はできない

 このように初回の相談時に資料を持参することやメモを作って持っていくことが効果的だとしても、事前に添付メールや郵送で資料等を郵送するのは、予め弁護士が了解した場合だけにしたい。勝手に送っても、ざっと見るくらいのことはできても、十分検討することはできないことが多い。

 というのも、初回相談時の前ということは、弁護士は、いったいどんな人からどんな事案が相談されるのかさっぱりわからない状況下にあるわけだ。そんな何もわかっていない状況で、生の資料だけ送られても、第三者である弁護士には、果たしてそれが何の意味を持つのかは正しく判断できない。相談を受けて説明をしてもらいながら、一緒にその場で資料を見るからこそ資料の意味がわかるのであって、事前に資料だけ送って見て下さいと言われても、相談者はわかっていても弁護士は何もわからないから、弁護士はただ意味不明なものをあれこれ想像しながら見るだけのことになる。

 じゃあそれならということで、詳細なメモに相談内容を記載して、資料と一緒に弁護士に送って事前に見ておいてください説明をつけてあります、というのも勘弁して欲しい。相談者としては相談時間を節約したいのだろうが、その分、弁護士の時間を使うことになる。特に、無料法律相談の場合は、その相談時間内が無料なので、時間外に弁護士に宿題を出されても、さすがにその宿題をやるところまで無料にはできませんと言うことになる。

 したがって、やはり事前に検討してくださいはやめて頂くのが無難だ。もっとも、見て頂かなくて構わないので、取り急ぎ送っておきますというのは全然構わない。送られれば、少なくともパラパラめくる程度には見られることも多いので、事前検討してくれという趣旨ではなく、ともかく先に資料だけ送っておきますということなら構わない。ただ、この場合でも、オリジナルの資料を送ってはいけない。まだ受任前の弁護士だから、一方的に送ってこられた書類を受任後と同様に管理することはできないので、相談だけで終わっても返却不要という程度のものを送って頂きたい。それでも重要な情報が含まれている資料のはずだから、やはり事前に弁護士に送るのはやめて、相談時に持参して見せるだけというのが無難ではないだろうか。

録音する場合には弁護士の許可をもらってください

 弁護士のコメントをあとで復習したいとか、今日来られなかった親族にも聞かせたいとか、そういう趣旨で、相談を録音させてもらっていいですかという相談者がたまにいらっしゃる。

 私はどうぞ構わないですよとお答えすることが多いが、弁護士によっては録音しないで下さいと言われることもあると思う。初回の法律相談で事案の全貌を必ずしも正しく把握できていない状態でのコメントが、後日ひとり歩きしても困るということからだろう。もっともなことだと思う。録音を拒否するから意地悪不親切な弁護士だとは思わないことだ。

 このため、法律相談の内容を録音したいという場合には、相談前に申し出て、弁護士の許可をもらってからにしたい。

余談:手土産などお気遣いは不要です

 来所頂く際に、手土産を持参なさる方が結構いらっしゃる。大変有り難いお気遣いだと思う。

 ただ、当然のことながら、手ぶらでお越しになったからといって気分を害するとかそういうことはありえない。とくに無料法律相談の場合、無料では申し訳ないというお気遣いがあったりするのかとも想像するが、無料法律相談の回でお話ししたとおり、必ずしもボランティアでやっているわけではないので、申し訳ないと思っていただかなくて大丈夫だ。

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