弁護士 小川義龍 の言いたい放題

 20年選手の弁護士小川義龍(東京弁護士会所属)が、歯に衣着せず話します。

警察批判はダメなのか

 お笑い芸人 次長課長の河本準一さんのツイートが問題になっているらしい。

次長課長・河本準一が「警察批判ツイート」を謝罪 

 交通違反の取り締まりに対して、「道路の隅に隠れず事故が多い地帯なら見えるところに立っとけや!コソコソ隠れて違反したらひょこっと出てきてからに」と、警察に対する批判的なツイートをしたことを謝罪したんだそうだ。

でも実際、白バイとか隠れてるよね

 実際、白バイとか、見えにくい場所に隠れて違反者を待ち伏せているように、私にも感じられる。河本さんの原ツイートのとおり、違反してから捕まえるよりも、違反されないように運転者からよく見えるところに白バイが待機していた方が、よほど交通安全には資する。しかしそれでは、彼らにとって残念ながら、反則金の売り上げが減ってしまうだろうが。

 他にも、駐車違反の取り締まり、例えば路上コインパーキング、金払ったら駐車違反にならないのも何かおかしい。駐車違反が取り締まられるのは、そこに駐車していると、事故が起こりやすかったり渋滞をもたらしたりするからだろう。路上コインパーキングを設置している道路は、そういうおそれがないから駐車を認めているはずだ。お金を払えば事故や渋滞が防げるわけではないから、時間外駐車や不払い駐車は、民事的なペナルティこそあっても、駐車違反の取り締まり対象になるのは釈然としない。

 こんな風に、警察の交通違反取り締まりに釈然としない思いを抱いている人は多いと思う。

警察批判は、本来好ましいはず

 なにごとであろうと、まったく根拠なく無闇に批判するのは感心しないが、こういう交通取り締まりの話題のように、素朴な市民感覚で頷く人が多そうな批判は、堂々述べてよいと思う。それこそが言論の自由市場というものだ。

 とりわけ警察のような公権力に対しては、世間による批判的な監視が必要だ。公権力の暴走抑止のために、世間の眼が厳しく彼らを見つめている必要がある。警察に限らず、政府や地方公共団体など公的団体についても同様だ。

 ちなみに私は、警察が治安を守るために一生懸命頑張っていることを認めるものだし、親戚友人知人に(OBを含め)警察官が何人かいる。したがって、警察自体にネガティブな感情はない。弁護士という職責上、刑事事件で警察と闘うことはあるが、それは被疑者被告人の弁護のために闘っているわけであり、警察憎しではない。闇雲に警察批判すべきだとは思っていない。

芸能人による批判発言

 かつて、こういう批判ないし問題提起は、もっぱら新聞をはじめとするマスコミが行っていた。しかし今はインターネットがある。まさに市民の一人一人が問題提起の発信者になりうる。とりわけ彼ら芸能人による発言は、親しみやすく注目を集めやすいだけに、世間に対する影響力が大きい。大きいからこそ、それが合理的な問題提起であれば、なおさら公権力に対する抑制が効果的になるだろう。

 もちろん、この手の発信には、賛否両論沸き起こることはやむをえない。多くが賛同できるような問題提起が好ましくはあるが、仮に否定意見が多かったとしても、その問題提起が合理的なものである限り、自分の意見や思想を「謝罪」する必要はないだろう。

 彼が前言撤回して謝罪したということは、警察による交通違反取り締まりは現状何も問題なく、いままで以上にどんどんやっちゃってくださいという意見に変わったということになるが、本当にそれでいいのだろうか。

謝罪の気になる2点

 ところで、今回の河本さんの謝罪の中で気になるのは、「交通違反だけに限らず抑止をもう少し強化してもらいたいと切に願っているだけです。警察官の方が大変なのはわかっております」と述べていることだ。

 「交通違反だけに限らず抑止をもう少し強化してもらいたいと切に願っている」との点。彼は、警察による抑止、つまり取り締まりのことだと思うが、交通違反だけに限らずもう少し強化してもらいたいと本当に思っているのだろうか。警察の取り締まり全般を厳しくして欲しいと思う感覚は、一見治安維持によさそうに見えるが、それに反して警察国家・監視国家に繋がってゆきそうでもあり、自由主義的には危険な匂いがする。

 交通違反にしても、不平等な取り締まりがなされているんじゃないかとの感覚はあるけれども、じゃあ、取り締まりを弱めて、交通違反を見逃した方がいいと私は思っていない。不公平感を持たれない平等な取り締まりの実現こそ重要であり、弱めたり強化したりするものではなかろう。河本さんのもともとの発言も、こういう趣旨ではなかったのか。

 また、「警察官の方が大変なのは分かっております」との点。警察官は大変な仕事だから、彼らを批判するなどもってのほか、との意見があったのだとすれば、あまりに幼稚といわざるをえない。公権力である以上、大変な仕事かどうかにかかわらず、批判や問題提起は普通以上にされてしまうことを甘受すべきだろう。大変な仕事に対して感謝や敬意を示すことと、公権力の行使を批判的に監視すべきこととは別の話だ。

余談:ちょっとうがった見方をすると

 実は彼のこの謝罪は、何か見えざる力に動かされてのものではないのか。

 表向き、Twitterの発言が炎上して謝罪したように見えるが、ここに述べたとおり、この程度の警察批判は、彼が初めて言い出したことではなく、昔から言い古された、珍しくもない内容だ。それを謝罪とは、いかにも大げさな気がする。

 それなのに彼がわざわざ神妙に謝罪したのは、この発言に対する反省とは違うような気がしてならない。つまり、彼が謝罪せざるをえなくなったのは、正しい批判であろうとなかろうと、およそ警察を批判するという行為そのものが、彼の芸能人としての何かを失わさせることに気づいたからではないか。

 そういえば、彼はパチンコ番組に出演しているようだ。パチンコ業界と芸能界とは深い繋がりがある。そして、パチンコ業界といえば警察の影響力が大きいと言われる業界。

 こうして、私の妄想は、どんどんふくらむ・・・(笑)

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