弁護士 小川義龍 の言いたい放題

 30年選手の弁護士小川義龍(東京弁護士会所属)が、歯に衣着せず話します。

内容証明が来た!(1)・・・「1週間以内に回答せよ」の意味

回答期限が区切られた通知書が届いた場合

法律相談を受けるきっかけとして、弁護士からの通知書が届いたというものが多い。特にその通知書が内容証明郵便で、末尾に「本書到達後、1週間以内に回答されたい」と結んである場合、期限までに回答しないとなんだか大変なことになるのではないかと心配なさる相談者がとても多い。

一方的に回答期限を切られた通知文例

この場合、期限を1日でも過ぎると大変なことになるのだろうか?

一方的な期限に法的拘束力はないのが原則

結論として、相手が一方的に通知書で指定してきた期限に法的拘束力はない。つまり、その期限を守らなくても、法的ペナルティをうけることはないのが原則だ。

もっとも、例えばお金を借りて返済していなかった場合に、いつまでに返済せよとの督促文を受け取って、期限までに返済しなければ、延滞金がかさむということはある。しかし延滞金が発生するのは、その文書によって期限を切ったから発生する法的効果ではなく、もともと期限を守らなかったことによる法的効果だ。

したがって、一般論として、期限を切られた通知を受け取ったからといって、受け取った相手がこの期限に法的に縛られるものではない。

できるだけ速やかに対応はすべきではある

しかし、一方的に切られた期限に法的拘束力がないとしても、通知に対する何らかの回答は速やかに行いたい。

なぜなら、期限を徒過したことによる法的ペナルティがないとしても、期限を過ぎて何も応答しないで放置していると、相手から無用な訴訟を提起されるなど、より一層面倒な事態に巻き込まれる可能性が高まる。したがって、通知が送られてきた場合には、必要以上に期限に執着する必要はなくとも、早めに何らかの回答をした方がいい場合が多い(なお、フィッシング詐欺のように、そもそも回答すらせず無視した方がいいケースもありうる。)。

また、上掲サンプルにもあるように、期限までに回答しない場合には提訴すると書かれている場合でも、期限を過ぎたら翌日提訴ということは普通はない。実際、期限を過ぎても1〜2週間待ってみて、その上で提訴準備することが多いので、実際に提訴されるまでには数週間程度の余裕はありそうだ(もっとも、これは一般論での適当な予測なので留意されたい)。ただ、期限徒過即提訴とは限らないものの、いずれにせよ応答しなければ提訴される可能性は日ごとに高まってゆくので、この点でも早めに何らかの回答をしておきたい。

例外的に、法的拘束力のある期限も存在する

なお、相手が指定してきた期限には法的拘束力がないのが原則であっても、例外的に、期限の定めのない契約を終了させるなど、何らかの予告通知等である場合、この通知によって法的効果が発生する場合もある。こういう例外的な場合には、通知書に書かれた期限が一切無意味とは言い切れない。したがって、たいがいの場合、期限に心配する必要はないとはいえるものの、弁護士からの通知書が届いたような場合には、その通知書を持参して速やかにこちらも弁護士に相談すべきだ。いずれにせよ、自己判断で放置しない方がよい。

取り急ぎの回答として・・・

それでもやはり弁護士に相談に行くうちに1週間、2週間と経過してしまって、心配ないと言われても、やはり不安だという人もいるだろう。この場合には、通知先に対して【弁護士に相談の上、通知内容を検討して回答いたしますので、今しばらくお待ちください】とか【弁護士に相談の上、通知内容を検討して●月●日までに回答する予定です】というだけの返信文書を「繋ぎ」で送付しておけばいいだろう。この場合、相手からの文書が内容証明で届いたからと言って、こちらも内容証明郵便で返信する必要はないので、普通の手紙でもFAXでもメールでも、電話でもいいと思う。

 

いずれにせよ、相手から一方的に切られた期限だけを気にして過剰な心配をせず、早めに弁護士に相談して対応を決めるのが一番だ。

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